A 優れた研究をした女性科学者に与えられる賞に猿橋賞というものがある。現在も男性研究者が圧倒多数をしめる自然科学の分野において、猿橋賞は女性研究者にスポットライトをあて、自然科学を志す女性を支援することを目的にしている。猿橋賞は女性科学者のみを対象にしているが、これを性差別だと批判する人はいないだろう。つまり、「差別」というのは、社会慣習や制度と結びつき、マジョリティ(社会的主流派)がマイノリティ(社会的弱者)を排除したり、不利益を強いることである。「レディースデー」のように、特定の人々を対象にしたサービスを設定しているというだけで差別だと批判するのは短絡的である。重要なのはその優遇制度が社会の中でどのような意味を持っているのかということである。例えば、あるレストランに「外国人お断り」の張り紙がしてあれば、それは日本の社会構造と深く結びついたマイノリティの排除であり、きわめて差別的ということになるが、阪神タイガースファンの集まる店に「ジャイアンツファンお断り」という張り紙がしてあっても、社会構造とは無関係であり、差別とはいえない。同じ理由で、メニューに「お子様ランチ・12歳未満の方のみ」と書いてあっても、おとなを差別していることにはならない。日本社会において、長年、女性は社会の表舞台から排除されてきた。日本で女性に参政権が保障されたのは、つい60年ちょっと前のことである。制度的に男女平等が保障されている現代においても、大手企業での女性重役は全体の1割以下しかいないなど、女性をこばむ見えない壁が数多く残されており、女性がマイノリティである状況は変わっていない。こうした日本社会で、女性がより娯楽を楽しめるよう映画館に「レディースデー」を設定することは社会的に十分意義があり、差別とはまったく関係ないことである。
84投稿者:ヾ(゚д゚)ノ゛バカー 投稿日:2008年04月10日(木) 17時25分01秒
B 映画館の「レディースデー」には、女性を支援するという社会的意義はまったくなく、たんに映画館が入場者を増やすために行っている営業戦略にすぎない。現代の日本社会では、娯楽や消費活動は女性たちがリードしており、旅行・観劇・ファッションに使うお金は女性のほうが多い。消費活動において新しいブームやファッションを発信しているのは主に女性たちであり、映画や小説にしても女性に支持された作品がヒット作になっている。一方、男性は日々仕事に追われ、平日に映画どころではないという人が多い。このことは、平日に映画館へ入ると観客のほとんどが女性であることからも明らかである。映画館の「レディースデー」は、多数派である女性客にアピールし、効果的に入場者数を増加させる目的で行われている。職場での昇進や待遇の男女格差とは逆に、娯楽や消費活動においては、むしろ女性のほうが主導権を持っており、マジョリティである。このような状況で、女性客のみ入場料金を割り引きする「レディースデー」は、「男は仕事・女は娯楽とショッピング」という男女の社会的通念の固定化をもたらすもので、好ましいものではない。また、マジョリティである女性客にのみ有利な料金設定をしているという点で差別的である。映画館のレディースデーは全国一斉的に行われており、社会的影響力も大きい。現在のように全国一斉的に割引サービスをするならば、水曜日は男女問わず誰もが1000円で映画を見られるようにするべきである。